「清明。」


不機嫌そうな顔を作っている男がいる、十二神将の一人青龍。
その青龍が主の名を呼ぶ。
主は安倍晴明。当代きっての大陰陽師。


「どうした宵藍?いつもにもまして不機嫌そうな顔をしておるのぉ。」


晴明は軽い言葉で返した。晴明の傍には六合や玄武もいる。


「・・・ の姿が見えん。どこにいった?」


そう、先ほどから青龍は を探し回っていた。
いつもならもう帰ってきている時間なのに姿がない。
青龍は の護衛、もとい保護者的存在である。
本来なら陰陽寮までついて行きたいが陰陽寮では子供(昌浩)やあの騰蛇もいる。
そのため帰るまではここで待つしかないのである。


「あぁ、 なら調伏に行っておる。」

「・・・は?」


晴明の言葉に青龍は気の抜けた声を出す。
対する晴
明はニヤニヤと笑っている。
それはもうかなり嫌味に。


「・・・今何と言った?」

なら帰宅途中に調伏に向かわせたと言っておるのじゃ。」

「・・・!!?」


晴明の言葉を聞いた途端、青龍の姿が消えた。
気配も消えているので隠形したわけではないだろう。
を追っているに違いない。


「ほっほっほ、元気の良いことじゃのぅ。」

「晴明・・・。」

「・・・・・・・・・。」


玄武と六合は同じ神将である青龍を哀れに思った。
晴明にいいように遊ばれているからである。
それに晴明が溺愛している孫娘を一人で調伏に行かせる訳がない。
昌浩も騰蛇もいっしょにいる。
特に問題はないだろう。


「いい加減青龍をからかうのは止めたほうがいいと思うが。」

「不憫すぎる。」


玄武と六合が晴明に口出しする。
それを聞いて晴明はまたも笑い出す。


あぁ・・・これ絶対聞いてないわ。


二人の神将はすぐに理解した。





































「昌浩〜。この辺だよね?」

「うん、多分この辺だと思う。」

「晴明の言ってることが正しければな。」


、昌浩、物の怪が順々に口挟んでいく。
二人と一匹は陰陽寮での雑用作業が終わったので帰宅しているところを
晴明の式から手紙を受け取ったのである。
中の手紙には


『北にある古びた古邸に化け物が出たらしいから行って払って来い。』


と書いてあった。
じい様にしては珍しくシンプルだと二人は思ったが裏面に


『あれほど本を山積みにするなと言っておるのにこりずに山積みにし
 本に押しつぶされ や紅蓮にまで迷惑をかけおって
 あぁ、じい様はそんな子に育てた覚えはないぞ・・・悲しいぞ昌浩・・・。
 これに懲りて二度と本を山積みなどしないように。
 ばーい晴明』


その手紙を読んだ後、昌浩が


「・・・んの狸爺ーーーーーーーーーーーっ!!!!」


と吼えたりしていた。
が、まぁ何にしても結局じい様の命令は絶対なので
調伏に向かうことにした。





































「あー今思い出しただけでも腹が立つ!!」

「仕方ないでしょ、今回は昌浩に非があるんだし。」

「おまけに、返答の余地ないしな

「もっくん、昌浩は一応将来有望な陰陽師なんだよねー?」

「お前もな、こいつはドジで半人前だが将来多分有望な陰陽師だ・・・多分。」

「うるさいよ にもっくん!!大体何でじい様がそのこと知ってるんだよ!!!」


化け物が出たと言われる場所を目の前にして昌浩の絶叫は続いていた。
晴明が事情を知っているのは大方、式を飛ばして観察していたのだろう。
そこまで孫を溺愛しているのかと聞けば嘘にはならないだろうが
半分くらい悪気が入っていると思う。


「もっくんも大変だよね、昌浩の面倒みるの。」

「分かってくれるか 、昌浩はしょっちゅう調伏を行っては怪我をして終わるんだぞ。
 見てるこっちの身にもなって欲しい。」

「あーもう!そういう も人のこと言えないじゃないか!!」

「え?僕なんかやらかしたかな?」


うーん、と考え出す


思い出せ自分は何をミスったんだ・・・。
朝早くから起きて、寝ている昌浩の髪をいじって遊んで
もっくんに落書きして
朝食取った後、宵藍と会話。
陰陽寮の書庫で昌浩が山積みにしていた本を倒して(故意)
その後、もっくんと一緒に昌浩の発掘に成功。
そしてじい様の手紙を受け取って今に至る。


「・・・ごめん、分からないや。」


その言葉にドサッと倒れこむ昌浩。物の怪も溜息をついた。
つもるところ昌浩が本に押しつぶされた原因は殆ど にあったと言える。
それ以上にいろんなことをやらかしているが。
たわいない話を続けている内にふと妙な気配がした。


「・・・・・・・・。」


辺りが急に静まり始める。
その刹那、大きな狼の獣のような異形が に向かって牙を剥き出して突撃してきた。


ドカッ


は左に跳躍してかわす。
すると今度は昌浩の後ろから別のものが疾走してくる。


「昌浩!」


の言葉に反応して昌浩はなんとか攻撃をかわす。
後ろにいたのは狐の顔をした鬼であった。


「・・・っの・・・一体じゃないのかよ!!」

「しっかりしてくれよ晴明の孫。これくらいババッて片付けるぐらいになれ。」

「孫言うな!」


喋ってる暇があるなら手を動かして欲しと思う だがあえて口にはしない。
しても恐らく聞こえないからだ。
未だ自分を敵視して襲ってくる異形を引き寄せながら後退していく。
達がいた場所は狭い上視界があまりよくなかった。


「物の怪もっくんの分際で口答えしないでよ!」

「もっくん言うな!」


まだ言うのかあの馬鹿どもは・・・
一人と一匹の会話を完全に無視し昌浩や物の怪と一定の距離を離れた後、 は異形と対峙した。
異形は体力が無尽蔵なのか疲れた様子を見せず
未だに剥き出した牙で に向かってくる。
はそれを懸命にさけていき一定の距離をとって声を出す。


「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」


詠唱し結んだ検印を振り下ろし異形を切り伏せた。
異形は断末魔を上げながら滅んでいく。異形は消えうせた。
はふと昌浩は大丈夫だろうかと心配が頭に過ぎる。
が、昌宗には騰蛇がついているので何の問題もないだろうと気を緩めてしまった。
その時、丁度背後で隠れて見えなかったもう一体の異形が に向かってくる。


「!?」


は異様な気配に後ろへ振り返るが目の前には大きな爪が顔目掛けて・・・。





































「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」


一方で昌浩はやっとの思いで異形を倒していた。


「ふー、冷や冷やさせやがって晴明の孫よ。」

「孫言うな物の怪もっくん。」

「もっくん言うな。」


いつものワンパターンの台詞を繰り返す一人と一匹。
物の怪はふと、妙なことに気づいた。


「お? がいないぞ?」

「え?」


昌浩が驚いたような声を上げる。
確かにさっきまでいた がいない。


「まさか、異形に・・・。」

「それはないよもっくん・・・。」


と、いいつつどっと冷や汗をかく昌浩。
言いたくはないが は自分よりしっかりしてるし、
そう簡単にやられたりはしないはず。
でも嫌な予感が耐えない・・・。


「早く探そう。」

「そうだな。」


昌浩と物の怪は を探し始める。
よく見ればところどころに噛み砕いたような後が奥へと続いているのが見えた。


「これって・・・。」

「さっきの狼の異形の噛み砕いた後だろうな。」

「違うよ、もっくんこれだよ。」


昌浩が指指した位置にはのような赤いものが見えた。
昌浩と物の怪に良くないものが写り始める。


「・・・急ごう!」


昌浩と物の怪は一目散に奥へと走り始める。






































奥へ行くと少し広めの場所に出た。


「青龍・・・。」


物の怪が嫌そうな顔で呟いた。
目の前には犬猿の仲の青龍が大鎌で異形の爪を受け止めていた。
青龍は爪を弾き真っ二つに切り捨てた。
異形は声を上げる暇もなく絶命した。


「ごめ・・・宵藍。」


が呟くと青龍は物の怪の気配に気づいたのか何も言わずに隠形した。
それを見て は苦笑する。


、大丈夫だった?」


昌浩が心配そうに聞いてくる。


「あ、うん、大丈夫だよ。宵藍が来なかったらやばかったけどね。」

「ならいいけどって、あ!出てるんでしょ!止めないと。」


そう言って昌浩は の服をつかむ。
突然のことに は驚く。
自分はなんて出した覚えないんですけど・・・。


「昌浩、僕は怪我なんてしてな・・・って何で服脱がすの!!?変態!!!?

「昌浩!お前はそういう趣味だったのか!!?

「え?って違ーーーーう!!!何考えてるのさ二人とも!!!
 さっき異形が噛み砕いた辺りにみたいなのがついていたから怪我してるか確かめただけだって!!」

「といいつつ実はその気だったとか・・・」

「もっくん!!!?」

「あーそれは僕が異形の顎を思いっきり蹴飛ばしたからだと


つまりあの血は顎を蹴られた異形の口から出た・・・。
それが噛み砕いたさいに付着しただけの話だった。


「何だ・・・びっくりした・・・。」

「こっちの方がびっくりしたよ!!いきなり服脱がしたりして!!」

「そういうな 昌浩の趣味だ

「えー、昌浩には彰子がいるじゃん。」

「いざというときにできないから欲求不満なんだろ。」

「違うって言ってるだろーーーーーーー!!!!」


昌浩の絶叫があたりに響く。
と、その時、晴明の式が手紙を持ってきた。
珍しく二つ。


「じい様が二つも手紙送って来たのは初めてかな。」


が呟く。
とりあえず一つ目の手紙を開けてみてみた。


『おうおう、昌浩や。紅蓮と言い合いをしている内に
 妹である を一人にしてしまうとは・・・。
 じい様は悲しい・・・そこまで昌浩が非常であったとは・・・。
 じい様の育て方が悪かったのかのう・・・これでは安心して調伏も任せられん。
 おまけに の服を脱がすなど何を血迷っそのような考えをしたのか・・・。
 確かに の容姿は綺麗だが妹に手を出してどうする・・・。
 悲しい・・・本当に・・・じい様は悲しいぞ昌浩。また一からやり直し。
 今日は宵藍に睨まれるだけじゃすみそうにないな。ほっほっほ。
 ばーい晴明』


昌浩の肩が震え始める。
これから何が起きるか察して と物の怪は昌浩から離れ始める。


「こんの…!くそ爺ーーーーーーーーーーっっ!!!!!」


本日二回目のくそ爺が出た。
これは割りと珍しいことである。


「あーもう!腹立つ!!もっくん、 、帰るよっ!!」


昌浩はぷんすか怒りながら早歩きをする。
ご立腹の昌浩に物の怪は、はいはいと生返事をし
後ろから追いかける。
昌浩と物の怪が見えなくなってから は口を開いた。


「宵藍、いるんでしょ?」

「・・・。」

「相変わらず不機嫌そうだね。」

「・・・何故調伏に行くと俺に一言報告しない・・・。」

「あぁ、ごめんごめん。忘れてた

「・・・。」


青龍は黙って を睨む。
そうとう怒っているのだろう、が
今回は自分に非があるのか の方が折れた。


「分かったって今度からちゃんと報告するから。」

「フン・・・。」


青龍はなら良い、と呟き隠形してしまう。
それを見て はやれやれと溜息をつく。
ちなみにもう一つの手紙には


『おうおう、 や。視界が悪く足場も悪いおまけに狭い場所で
 お互い邪魔にならないために異形を手頃な位置に誘き寄せたまではよかったが
 最後まで気を抜いてはならん。その辺を以後気をつけるように。
 ばーい晴明』


と書いてあった。
それを見て は苦笑し手紙をしまった。


「・・・。宵藍がさっさと隠形しちゃったけど、
 あのことについて怒ってなかったのは多分、あの一部始終は見てなかったのかな?」


クスクスと笑いながら は昌浩を小走りで追いかけていった。





































その後、神将の間に昌浩が 服を脱がそうとしたという噂が流れた。
流したのはもちろん晴明。
勾陳辺りは笑っていたが。青龍はかなり怒りを顔に表していたいう。
が、結局 に止められその場は収まったとか。





































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えっと記念すべき少年陰陽師第一弾です。
本当に書きながら思ったことがあるんですよ。
異形ってなんかあるのかって…
それと、またかなりふざけたことに変な会話になってますね。
管理人の未熟ゆえに。
んーま、楽しんでくれたらそれで良いんですけどね。

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